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日常茶飯事とCDコレクション
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70年代後半、ヴァージンをクビになった後の ヘンリー・カウ (2)

 木曜日に久々、ライヴを見に行ってきた。The Artaud Beats という、Geoff Leigh(computer,fl,vo)、Yumi Hara Cawkwell(key.vo)、Chris Cutler(ds)、John Greaves(b,key,vo) から成るカルテット。Chris Cutler も John Greaves も聴き始めてから30年以上経つのにご尊顔を拝んだことがなかったので、1年何ヶ月振りにライヴ・ハウスに足を運んだのであった。会場に入ると、やっぱり観客の年齢層は相当高め、Crimson や Yes だのの名前が会話の端々に聴こえる、その世代のおじさんが集まった感じ。客の入りは30名から40名程度といったところか。
 演奏者も舞台のそばで、まったりとビールなんか飲んで、不良老人の雰囲気を濃厚に醸し出している。Geoff は1945年生まれの67歳、Chris は47年生まれの65歳、John は50年生まれの62歳だから、老人というにはちょっと可哀想か、老年に片足を突っ込んだというべきか。このなかで、Chris が最も端正かつまともそうに見えた、Henry Cow 40周年記念Box Set のDVDに映っている面貌と大きく変わらず(変わったのは、髪が後退し一層額が広くなったことと頭の後ろが相当薄くなったことくらい)、体つきもスリムだ。
 開演時間を15分か20分過ぎた頃、 Yumi Hara CawkwellさんのMCで「スタートは John Greaves のソロ、ピアノの弾き語りから」、John がおもむろにピアノの椅子に座り、ライヴが始まった。John は赤ら顔の大きな体つきで、ピアノ演奏が窮屈そうな感じ。朗々とした渋い声での弾き語りは、期待していたものとは違っていたが(やはりアヴァンギャルドなインプロを期待しますよね?)それなりには楽しめた。途中、フランス語での1曲もあり、ソロのラストは Geoff のフルート入りの How Beautiful You Are 。この曲は、John のソロ名義の Parrot Fashons に入っていたバラードで何故かよく覚えていた、さびの部分などつい口ずさんでしまったくらい。全部で30~40分程度の演奏。
 2部は、カルテットでの演奏。Geoff はコンピュータを中心にフルートや縦笛を吹くのだが、サックスは全く演奏せず(持ってきてもいない)。特筆すべきは、やはり Chris のドラム、数種類のスティックやブラッシュを使い分け、色の付いた(全体の半分が赤、先端が光沢のある青の)スティックを操る姿は、求道者的面貌と相まって千手観音のように見えた(ちょっと言い過ぎか)。それでも、手数の多さは凄いとしか言いようもない。John は、危ないオヤジそのものでベースをかき鳴らす。やや、ピアノのお姐さんが単調な感じもしたが、十分に楽しめる演奏であった。1時間15分程度の演奏時間だったと思うが、あっという間だった感じ。

 若い頃は、ポップかシリアスか、作曲か即興か、共産主義化か享楽主義か、など数々のたいしたことのない違いで分かれたりくっついたりしたミュージシャンたちも、60歳を超えてくれば恩讐の彼方、昔の仲間との地を丸出しにした音楽を演奏することになる、ということか。

 ということで、Henry Cow の2回目。
 
70年代後半、ヴァージンをクビになった後の ヘンリー・カウ (2)_a0248963_1258188.jpg 1976年の Concerts 。Disk1の殆どが作曲作品(Track 9、10を除く)で、特に Track1~5のBBCライヴ(75年8月)が音質、演奏とも良い。Dagmar Krause の声はあくまでも伸びやかかつ艶やかで、演奏も決まっている。
 Track6、7は、Robert Wyatt が加わった75年5月の演奏、この頃 Wyatt は Cow のことを最も好きなバンドだと言っていたようだが、自分の思想と共鳴する部分があったからか、それとも音楽の方向性が同じであったためか。録音があまり良くないのが残念だが Little Red Riding Hood Hits the Road が聴けるのは嬉しい。
 Track8『Ruins』は、言わずと知れた2ndからの曲、Disk2のTrack12と同日の75年10月イタリアでの録音。Track9、10は74年9月のオランダでの録音、インプロヴィゼーション。ロックのインプロヴィゼーションは映像が付いているならそれなりに楽しめるが、音だけだとちょっときつい。ジャズだと気分よく聴けるのに、どうしてだろう。Disk2は全部がインプロなので、Disk1に比べると格段に聴く回数が少ない。特に、Track9~11の73年のライヴ(この部分はCD化に際して加えられたもの、Greasy Truckers Live at Dingwalls Dance Hall という1974年のアルバムから、それまでは入手が困難なことで有名であった)は、なかなか聴くに根性がいる。
 このアルバムを最後に John Greaves はバンドを離れ、捻くれポップ路線を Peter Blegvad と共に邁進し、Kew Rhone という傑作を初めとする数々のアルバムを残す。

70年代後半、ヴァージンをクビになった後の ヘンリー・カウ (2)_a0248963_12583857.jpg そして最終作が 1979年(78年7~8月録音)の Western Culture 。赤い鎌と槌の付いたジャケット、裏は 'Culture' と書かれた紙幣が舞う、という主義丸出しのもの、当時は音楽を聴くにも額に縦皺を入れなきゃならなかった、今となっては笑うしかないよね。
 この頃の Cow は音楽路線に(主義主張にも)違いが出てきて、分裂致し方なしという状態。78年1月に録音された Hopes and Fears は、Cow の名義で発表する予定だったらしいが、小品が全て歌物という構成に Tim Hodgkinson からクレームが付き、Frith と Cutler が権利を買い取り、Art Bears 名義としたもの。一方の器楽派が中心となったのが本作で、LP でいえば A面が Hodgkinson の作品、B面が Cooper の作品となっている。この2作、雰囲気がまるで違う、同じバンドの作品とは到底思えないほど。
 そうしたバンド内の雰囲気もあったためか、本作は非常に緊張感を持ったタイトかつ硬派な演奏が繰り広げられ、世評もそうだが Cow の最高傑作ではないかと思う。しかし、Hodgkinson は本作をそんなに評価しておらず「根性のない演奏」とか言っているそうだ。Annemarie Roelofs がヴァイオリンとトロンボーンで全面参加(Track7以降を除く)、1曲のみジャズピアニスト Irène Schweizer が参加。フリー・ジャズ人脈にも繋がりがあったことが判る。

70年代後半、ヴァージンをクビになった後の ヘンリー・カウ (2)_a0248963_1259170.jpg70年代後半、ヴァージンをクビになった後の ヘンリー・カウ (2)_a0248963_12592025.jpg 最後に The 40th Anniversary Henry Cow Box Set 。10枚にも及ぶ膨大なアーカイヴ。Chris Cutler の自己言及癖ここに極まれリ的な至れり尽くせりの作品集で、音の面でも Bob Drake の偏執的なマスタリングで相当聴けるものにはなっているが、いかんせん量が多すぎる。またインプロ部分も多く長時間聴くことも辛い、ということで購入以来、数回しか聴いていないのが現実。
 このボックス・セットが発売されるということでReR に予約を入れた、送料込みで100ポンドという安さで、先行して発売された Stockholm & Göteborg も直ぐに送付されるという親切さ。予約者のみの特典CDには自分の名前と『512/750』とのナンバリングが書かれている。丁度、本作が送付されクレジット・カードからの引き落としがある頃がポンドの最安値だったので、お徳感があったことを覚えている。
 10枚目は DVD で、76年スイスでの収録。Dagmar はそれほどでもないが(失礼!)、Lindsay Cooper 、Georgie Born はなかなか美しい。特にLindsay は凛とした主義主張を確り持っている感じで、お付き合いしたいとは思わないが、良い。しかしながら、映っている場面が少ない、あまりに少なすぎる!Frith や Hodgkinson など映っている時間を半分にしてよいから、Lindsay を・・・と思うのは自分だけだろうか。

 近頃、聴かなくなってしまってあるCDを引っ張り出してきてまた聴く、ということをやっている(以前書いた通り)。Henry Cow 一派を聴く機会も随分多くなった。各人のソロ作や後継グループの作品も紹介できたら、と思う。
by ay0626 | 2012-06-16 08:52 | rock