3つの期間に異なる3つの面貌を持つ 5UU'S
しかしこの作品、核心となる事実が昭和60年時点で成立出来たか、という点では首を傾げざるを得ない。【ネタバレあり】同じような事実から事件が発生する三津田信三さんの『首無の如き祟るもの』のように年代の設定が戦前から戦後に掛けて、というならいざ知らず【ネタバレおわり】登場人物もまともな地方公務員を配しているのだし、う~ん。ネットでの評判も良さ気だったので期待はしたのだが、これだったらネット評判が今一歩だった前作『龍の寺の晒し首』のほうがよかったかも。文句は言っておりますが、読んでいる間はかなりのめり込みました、また海老原シリーズの新刊が出たら買ってしまうでしょう、ハイ。
また、音楽ブログとは関係ない方向に行きそうなので、修正。Thinking Plague 、Motor Totemist Guild と来たので(ちょっと間が空いてしまったが)、今回は 5uu's 、これでアメリカ西海岸 RIO の3つのバンドを全部(といっても、どれも Part 1 ばかりだが)紹介することになる。
自分が RIO の音楽を一番聴いたのが90年代の半ば頃、丁度第2期 5uu's がバリバリの現役で CD リリースを行っていた時期に当る。変拍子と変な音響処理の施された、しかしロックとしか言いようのないドライヴ感を持った演奏の上に、まるで Yes のようなハイトーン・ヴォーカルを乗せた音楽は、当時聴いた多様な音楽の中でも一際印象に残ったのである。
5uu's のデビュー作は1984年録音、86年リリースの Bel Marduk & Tiamat 。ドラマーの Dave Kerman 率いるこのバンド、最初は King Crimson のカヴァーなどしていたようで、現代音楽風に複雑な音楽を作っていた Thinking Plague やごった煮的アヴァンギャルドからチェンバー方向に走った Motor Totemist Guild に比べて、至極まともなプログレッシヴ・ロック的アプローチとなっている。
本作のメンバーは、Kerman (dr)、Jon Beck (b)、Greg Conway (g)、Curt Wilson (vo) 。典型的なロック・カルテット、他の2つのバンドは女性ヴォーカルに拘ったが、このバンドは美声系の男性ヴォーカル、これだけでもロックっぽい感じになる。後のインタヴューなど見ると、殆ど Kerman のワンマン・バンドのようであった。
この Kerman という人、ドラマーとしては言うに及ばず、作曲家としても相当な才能を持っており、その上 RER USA 代表という CD ディストリビューターであり、Ad Hoc Record の主催者であり、と現時点では Chris Cutler に次ぐ RIO 活動の推進者といってよい。
85年録音の Bar Code というシングルを挟んで 86年には Motor Totemist Guild のメンバーを全員ゲストとして迎えた Elements を作成、88年に本家 RER Megacorp からリリースする。このアルバムからキーボードの Sanjay Kumar が加わり、その後長い期間 Kerman との共同作業を行うことになる。
一方、ゲストとして参加した Motor Totemist Guild のメンバーは、James Grigsby (b,etc)、Emily Hay (fl)、Becky Heninger (cello)、Lynn Johnston (sax) 。チェンバー部隊がごっそり入り込んではいるが、作曲が Kerman なので前作から大きく印象が異なることはない。
ロック色が明らかで、かつ明快なメロディーを持っているため RIO の音楽としては相当聴き易い音楽に仕上がっている。(良い画像がないのはご容赦のほど)
上記2枚のアルバムは 96年にアメリカ Cuneiform Record から 2in1の形で復刻された。Motor Totemist Guild 、Thinking Plague も追うように初期作品が 2in1の形で復刻される、その皮切りとなるリリース。(ジャケットは Bel Marduk & Tiamat を使用している)
その後、5uu's は、Motor Totemist Guild と合体し U Totem となり、単独活動を停止する。U Totem が休止する 94年に新生第2期 5uu's が出来上がる。このときのメンバーは、Kerman 、Sanjay Kumar に加え、Thinking Plague のベーシスト Bob Drake 。驚いたことに Bob Drake 、Yes の Jon Anderson の如きハイトーンで歌い捲くるのだ、なかなかの迫力、何故 Thinking Plague で歌わなかったのか。
第2期5uu's の最初のアルバムが 94年の Hunger Teeth 。非常にロック的なアプローチの強いアルバムで、第1期の音楽とは大分面貌を異にする。ドラムとベース、特にベースのウネウネとした、それでいて推進力のあるリズム陣に多彩なキーボード、時としてヴァイオリンやギターが被さり、43分程をあっという間に聴き終えてしまう。この時期の RIO 諸作の中でも傑作の呼び声の高い一作。
97年リリースの Crisis in Clay は94~96年録音。Bob Drake の趣味的音響処理が全開といったところで、一部には混沌とした印象も。本人たちも言っていた通り、前作が Yes 的ならば本作は Led Zeppelin 的なアプローチなのか。
この頃、グループの本拠はフランスにあったらしく、Kerman の Present の一員としての活動や Drake のエンジニアとしての仕事の多くがフランスで行われたのも頷けるところ。
この2枚でパワー・トリオとしての活動を終えた 5uu's は、今度は Kerman のソロ・プロジェクトとして00年代に復活することになる。
聴き始めた当時は、こうしたロックばりばりの音楽も苦もなく聴けたものだが、この歳になると若干気合いを入れないと全曲聴き通せないことも。現代音楽やもっと生音が多いものはそんなことはないのだが、特に読書の BGM としては向かなくなってきた感は強いなぁ。Kerman はほぼ自分と同じ歳、これからも過激な音楽を作っていくのだろうか。