衝撃の1964年、スピリッチュアル・ユニティとその前夜 アルバート・アイラー (3)
それでも、野●元首相はどんな気持ちなのだろう、ちょっとは興味がある。自爆テロだとか言ったバカな元文部科学大臣もいたのだが、ホント完全落選で良かった、あんたも首相に選んで貰った訳、批判だけでも封印するのが人の道ってもんだろう。
年末も近くなり、ヨーロッパはクリスマス・シーズン、そのせいかチェコのレーベルに注文したCDがなかなか到着しない。12月11日付けで「発送完了」のメールが着ていたので、そろそろだとは思うが。年末は、何があるわけでもないのに、何か慌しい感じがする。この時期の3連休はあまり楽しくはない、小学校・中学校はこのまま冬休みに突入なので開放感が大きいのかもしれないが、生憎大人はそういうわけにも行かず、何かやらなきゃならないが、未だ年末準備をする時期でもない、非常に中途半端な感じ。そうしてみると、昭●天皇は良い時期にお生まれになった、あの方がいなければゴールデンウィークも今のような形にはならなかったのだから、それだけでも大したものです。
久しぶりにジャズ、Ayler の Spiritual Unity でも。何といっても自分のジャズ歴は Weather Report と Albert Ayler から始まる。やはり、主流のジャズは面白くなかったし、今でも余り聴こうとは思わない。Miles Davis は、最近でこそ良く聴くが、ジャズを聴き始めた頃は彼の音楽は退屈で仕方がなかった、尤も今でも新クインテット以降しか聴かないので、あれが当時のジャズの主流とは思わないが。やはり、衝撃が最も大きかったのが Ayler 、Taylor もそりゃあ凄いと思ったが、サキソフォンの衝撃度はピアノの衝撃度の何倍もあったということか。
1964年6月14日、ニューヨークの Cellar Café でのライヴが Prophecy 、Ayler の死後1975年になって発表された作品。Spiritual Unity のほぼ1か月前の録音で、Spiritual Unity の方法論は完全に確立されている。Ayler は、フリーの典型のように言われるが、例えば Coltrane や Pharaoh Sanders のように咆哮するような吹き方は少なく、ぐにゃっと曲がったような泣くような感じの演奏が多いように思う。陰に籠ったというわけではないが、外に発散するようなところは少ないように思うのだ(この時点では特に、後期に行けば、死の直前期などは随分ふっ切れた感じがあるのだが)。
この時のメンバーは、いわずと知れた黄金のトリオ、Albert Ayler (ts)、Gary Peacock (b)、Sunny Murray (ds)。Murray のどしゃどしゃとした特徴的なドラムが印象的であると同時に、ああ Ghost はこのドラムじゃないと、といいたくなるというもの。Peacock は、今となっては Jarrett Trio の名ベーシストということなのだろうが、ちょっと違和感有り捲くり、変節のようなものを感じてしまうのは、ただ自分の Jarrett 嫌いのせいか。でも、あのグレン・グールドを真似たとしか思えないクラッシクかぶれの芸術家さんはどうしても好きになれないのです。
この Prophecy の増補盤が 1996年にドイツでリリースされた Albert Smiles With Sunny。この CD、かなり博捜したものの手に入れることが出来ず、かなり悔しい思いをしたが、後に出た10枚組アーカイヴ、Holy Ghost に増補部分が全収録されることになり、聴くことが出来るようになった。この部分は、Albert Smiles With Sunny と曲表示が異なっている模様。ちなみに、ドイツ盤は、Sweet: first variation (6:29)、Ghosts: third variation (10:20)、Truth Is Marching In (10:53)、No Head (6:44)、Sweet: second variation (9:22)となっているが、アーカイヴでは、Spirits [incomplete] (6:38)、Saints (10:32)、Ghosts [incomplete] (10:56)、The Wizard (6:51)、Children (9:05)、Spirits [theme] (0:28)となっている、いかにも曲の題名に拘りのなかった Ayler らしい感じではある。
そして、同年7月10日、傑作 Spiritual Unity 録音。ESP レーベルの名を一躍世に知らしめた作品。テナー・サックスを持ち走っているような男を描いたジャケットの素晴らしいこと。
35年ほど前に聴いたとき、初めて思ったことは「こんな雑音、金払って聴く奴がいるんだ」。それが、数回我慢して聴くうちに「ああ、フリーって気持ちがいいんだ」に変化する。馴れというのは恐ろしいもんで、今では全然平気、むしろ、時間が経つと、Peacock のテナーへの合わせ方とか、ソロの取り方とか、Murray の唸り方とか細かい点も聴き込むようになって、それは良い音楽経験であったと思う次第。これを基にヨーロッパ・インプロから一部のノイズ・ミュージックまで聴けるようになっていく、しかしノイズ・ミュージックは余り必然性を感じられないものも多いが。
このアルバム、何度もレーベルを変えリリースされてきた、殆ど入手不能になる時期もなかった。これほどの名盤(?)でも不思議なことがあるようで、それは3番目の収録曲 Spirit のヴァージョン。今流布しているのは6分52秒のヴァージョンだが、1964年の初リリース時は7分50秒のヴァージョンだったという。この二つのヴァージョンを初めて収録したのが、1993年に徳間ジャパン傘下のヴィーナス・レコードからリリースされたもの、自分が持っているのがこれ。例えば、Coltrane の Ascension にも2つのヴァージョンがあったように、稀には同じレコード番号でもこうした違いがあるようだ。Ascension は、この事実が明らかになって以降、幸い CD なら2つとも収められる演奏時間なので、両ヴァージョンとも収録されているようだ。しかし、Spiritual Unity に限っていえば、これ以降2つのヴァージョンを収めた盤はない、これはどういうことなのだろうか、不思議だ。
もうひとつ、収録曲の4番目 Ghost : Second Variation の途中に入る ’ピー' という音。この音、昔の盤には入っていた、自分の持っている盤も同様。しかし、最近の盤には入っていないという。かなり気になる音なので、消せるものならもっと早く消すべきだったのではなかったか、不思議だ。
ということで、35年間、年数回程度は聴いています。
Ayler は、歴史に埋もれることもなくリリースされ続ける。ほんの短い人生だったが、音楽家としての名前は長く残っていく、それはそれで幸せなことなのだろう。