ベースの可能性・無伴奏の魅力 吉沢元治
おじさんもこの頃は良くゲームをやっているようで、ファミコンやらスーパーファミコンで遊んだ人たち、今40歳代前半の人だと頷いてくれると思う。自分の世代は、子供と一緒にやるか、パソコンがマイコンと呼ばれていた時からやっている人が中心、まぁいい大人はゴルフとかそういう大人の遊びをしなくちゃね、と思っている人たちはビデオ・ゲームとは縁がなかろう。そういえば、社会人になって2~3年後(大学時代には KT-80 という自作コンピュータのセットが発売され、高価ではあったが友人の一人は購入して遊んでいた)には、例えば富士通のFMシリーズとかNECのPC-88、98シリーズとか色々な機種が出て、ちょっとしたブームとなった。しかし、かなり高価だったことは確かで、購入するのに相当無理をしたのを憶えている。
この当時、嵌り込んだのが『Wizardry』と『信長の野望』。特に『Wizardry』はやり込んだ、モンスターと出会うと読み込みに時間が掛かり、ドライブががちゃがちゃ音を立てる、戦闘が終わるとまた読み込みに時間が掛かって・・・・・・、と今から考えるとイライラするんじゃないかと思えるのだが、当時はそれで満足していた訳だ。『Wizardry』は、戦闘結果を自動読み込みする仕様となっていたので、全滅などすると真っ青、二度とそのキャラクターと会えなくなる。このゲームのなかなか厳しいところなのだが、読み込んでしまう前に強制終了してしまうと助かることがある、地下8階辺りでアーク・デーモンとご対面しようものなら、強制終了ボタンに手を置きつつ・・・ということになるのだ。
ここら辺のところは、矢野徹氏の『ウィザードリイ日記』にも記述のあるところで、頷きながら読んだものである。矢野さんは日本SF界の長老で、『カムイの剣』が有名、自分も夢中で読んだ記憶がある(多分高校生の頃)。矢野さんも60歳を過ぎてコンピュータ・ゲームに嵌り込んだ口で、そのことが面白おかしく書いてある、こんな風に歳を取りたいと思っていたが、既に彼が『Wizardry』に嵌り込んだ歳に近くなっている。
CD のほうは、近頃聴くことが少なくなっていて、ついに音楽ブログお終いか、と自分でも不安になってくる。そうしたら、読書とゲームのブログでいいや、と何ともいい加減なことを考えている。
今回は、吉沢元治、言わずと知れた日本フリー・ジャズ界を代表するベーシスト。といっても、所持しているのは初期3枚のソロと阿部薫との『Nord』のみ。大学生活の後半、ちょうど Cecil Taylor の Great Paris Concert を聴いて、Alan Silva のベースにいたく感激、ベースをもっと聴きたくなった。そのときたしかトリオ・レコード(今は無きオーディオ・メーカーの子会社)から一連の日本のフリー・ジャズの廉価盤シリーズが出て、その中で聴いたのがここで紹介するうちの2枚。このシリーズは、沖至の『しらさぎ』だとか加古隆と高木元輝の『パリ日本館コンサート』とか豊住芳三郎の作品とか、本当に良く聴いたレコードが多かった。ジャケット・デザインも優れたものが多かったように思う。
吉沢元治は、1931年生まれ、1998年に亡くなっている。他のフリー系ミュージシャンに比べてもかなりの年長者である。初期のベース・ソロ3部作が有名(後期ソロ3部作もあるのだが、聴いていない)。
最初のソロ作品は、『Inland Fish』、1974年9月のライブ録音。LP B面の殆どを占める Correspondence は豊住芳三郎とのデュオ。2枚目が『割れた鏡または化石の鳥』、1975年7月軽井沢教会での録音。これは ALM というマイナー・レーベルから出て、当時は全く手に入らず、CD化されてから初めて聴いたもの。10曲のバラェティーに富んだ作品集。3枚目が『Outfit』、1975年9月のライブ録音。bass solo 2 1/2 とあるのは、最初の『Inland Fish』のB面が豊住氏とのデュオだったからであろう。
どの作品も、イマジネーション豊かで、真面目な人柄が滲み出る作品。特に2枚目の『割れた鏡または化石の鳥』は『よくこんな曲想が出るなぁ』という感じ。例えば Silva がヒステリックな感じ(バイオリン並みの超高音を出したり、といったところなど)なのに対して、ベースの低い音を中心に組み立てている、ベースのベースらしい音が好きなのだと思う。1年に2~3回しか聴かないが、それでも30年(途中10年以上のブランクはあるが)前から聴いていて、未だに聴くのは、やはり低音好きだからか。
もう梅雨明けか。朝から気温はぐんぐん上昇、小暑どころじゃなくていきなり大暑、酷く暑い夏になりそうで。